この記事の閲覧数: 5回
幼少期、スーパーカーブームをきっかけにポルシェという存在に興味を持って以来、数え切れないほどの旧車・趣味車と付き合ってきた。生涯で50台以上の個体に触れてきたが、そのなかでも今でもふと思い出す出会いのひとつが、964カブリオレとの出会いだ。
最初に手に入れたポルシェは、2014年式の911(991)Turbo Sだった。足回りを純正の状態に整えてじっくり乗ってみたものの、どこか「子供の頃に憧れたポルシェとは違う」という感覚が拭えなかった。性能としては申し分ないのだが、記憶の中にあるポルシェ像との間に、なんとも言えない距離を感じていたのを覚えている。
そんな時期に出会ったのが964カブリオレだった。狙って探し出した一台ではなく、ある中古車店にふらりと立ち寄った際、店の奥にひっそりと置かれていたのを偶然見つけた。店主の評価はシンプルだった。「これはいい車や」。多くを語らないその一言に妙な説得力があり、その場で購入を決めてしまった。
ポルシェという車には、走行に関わる部分には徹底的に投資し、それ以外の部分は簡素で合理的にまとめるという思想が貫かれている。自分はこの思想に惚れ込んでいる一人だ。964はまさにその哲学を体現した一台で、カブリオレならではの開放感を持ちながらも、空冷らしい機械としての手応えがしっかり残っている。屋根を開けて走れば、エンジン音や路面からの情報がより直接的に伝わってくる。991Turbo Sで感じた物足りなさの正体は、この感覚だったのかもしれない。
「どのポルシェが一番いいですか」とよく聞かれるが、正直なところ明確な答えは持っていない。どれも良い、それぞれ違う、というのが率直な感想だ。ただ、あえて個人的な意見を言うなら、初めての911であれば、現行モデルなら標準のCarrera、空冷であれば964が入口としてちょうどいいと思っている。現代的な扱いやすさと、空冷らしい鮮烈な感覚とのバランスが取れているからだ。
古いポルシェの魅力は、年代を遡れば遡るほどダイレクト感が増していくところにある。ステアリングを通じて伝わる路面の情報、シフトフィール、エンジンの回転感——すべてが今の車よりも生々しく、運転しているという実感が濃い。964カブリオレに乗るたびに、そのことを改めて実感させられる。
ただし、こうした車は展示しているだけでは意味がない。乗らなければ調子を崩してしまうこともあるし、何より「誰かに乗ってもらいたい」という思いがずっとある。この「乗ってほしい」というシンプルな気持ちこそが、PORSCHE GATEを始めた理由のひとつだ。964カブリオレのような一台と出会い、その魅力を少しでも多くの人に知ってもらえる場を、これからも作っていきたいと思っている。
この記事が参考になったら、最新情報をXでもチェックしてください。
@porsche_gate をフォローする
