空冷ポルシェの歴史を語るうえで欠かせないのが、あの有名な「901から911への改名」のエピソードです。今回は木曜恒例の歴史コラムとして、その背景を振り返ってみます。
もともとは「901」という型式だった
1963年のフランクフルトモーターショーで発表された356の後継モデルは、当初「901」という型式名で登場しました。ポルシェ社内の開発コードとしては、100番台の数字にモデルを割り振る慣習があり、356の後継として901という番号が与えられたのです。
フランスの商標ルールがきっかけに
ところが、量産を目前に控えたポルシェに、フランスの自動車メーカーであるプジョーから待ったがかかります。プジョーは当時、フランス国内において「中央に0を挟んだ3桁の数字」を車名に使用する商標権を保有していました。201、301、401、404、504といった型式名を見れば分かる通り、プジョーはこの命名規則を長年守ってきたメーカーです。901という型式名がこの規則に抵触するとして、プジョーはポルシェに対して異議を申し立てました。
「0」を「1」に変えるという解決策
この申し立てを受けて、ポルシェは型式名を変更する決断をします。中央の「0」を「1」に置き換えることで商標の問題を回避し、「901」は「911」として生まれ変わりました。実はこの改名の直前、既に901の名を刻んだ個体がごく少数生産されており、現存する「901」バッジ付きの車両は今では非常に希少なコレクターズアイテムとして扱われています。もし当時プジョーとの間でこの一件がなければ、私たちが「911」と呼んで親しんでいるこの型式名は、まったく別の数字だったかもしれません。
偶然が生んだ、今に続く型式名
商標トラブルという、いわば偶然の産物から生まれた「911」という名前ですが、結果的にこれほど世界中で愛される型式名になったのは興味深い巡り合わせです。901から911への改名は、単なる型番の変更にとどまらず、後に60年以上続くことになる伝説の始まりでもありました。次にガレージで空冷911のリアデッキを眺める機会があれば、そこに刻まれた「911」の数字の裏にある、こうした歴史の一幕を思い出してみてください。
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